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2023年7月号 並木道

最近、ある言葉を何度も口に出していることに気が付いた。ちょうどこの文章を書く直前にも、その言葉を口にした。「忙しい」、「時間がない」だ。


「タイパ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは「タイムパフォーマンス」の略称で、かけた時間に対する効果を指す時間対効果のことだ。昨今、動画コンテンツの倍速視聴をはじめ、日常生活におけるタイパ重視の傾向が見られる。


その一方で、タイパ重視によって時間に追われる感覚が強まりつつあるのも事実だ。『セイコー時間白書2023』によると、回答した全国の10代~60代の男女1200人のうち、約65%の人が日常的に時間に追われる感覚を覚えているという。


「時間を効率的に使いたい」という考え方は古くから存在する。加えて、コンテンツが膨大化する現代において、人々は昔以上に時間を必要としている。現代社会の実情を考慮すれば、タイパ重視はある意味必然なのかもしれない。しかし、本来タイパ重視の目的は、「効率化によって生み出した自由な時間を使って、自らの人生を充実させること」であるはずだ。タイパを重視した結果、常に時間に追われ、人生の豊かさが失われては本末転倒だろう。


現代人には、効率を気にせずに過ごす時間がもっと必要なのではないだろうか。要約サイトを見る時間を使って書店を訪れてみたり、音楽を倍速再生やスキップすることなく、最後までゆっくり聞いてみたりする。あるいは、空いた時間にあえて何もせずボーっとしてみる。一見非効率的に見えるが、そうした行動が我々の人生を豊かなものにしていくのではないだろうか。


私が最近「忙しい」、「時間がない」と口にしてばかりいるのも、効率を求めすぎた結果だろう。たまにはパソコンの手を止めて一息つき、空でも眺めながらぼんやりと時間を過ごしてみるのもいいかもしれない。(前田知哉)

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11月23日、紀伊國屋書店新宿本店3階アカデミック・ラウンジにて、本学文学部日本文学科の大橋崇行准教授による講演会が開催。「落語、西洋に出会う。」というタイトルの下、西洋文化が落語に与えた影響や現代における落語の意義などが論じられた。当日の会場には学生、出版関係者など多くの人が足を運び、講演会はほぼ満席の状態で開始した。 落語と聞くと、おそらく多くの人は江戸時代を思い浮かべるのではないだろうか。江

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