ザ・ビートルズの「Nowhere Man(邦題:ひとりぼっちのあいつ)」という曲について、興味深い話を聞いたことがある。「Nowhere Man」という題には、「Now here Man」と区切る場所によって意味も変わる言葉遊びが意図されている、という。「居場所のない人」から「今ここにいる人」か、なるほど。このエピソードは俗説に過ぎないと後に知ったが、180度変わる意味に感心したのを覚えている。
現代の若年層における「居場所」の問題は深刻だ。「居場所がない」と感じる若者の多さと社会課題の間に関連があるとして、こども家庭庁などの機関が調査を進めている。昨年9月に同庁が公表した調査結果では、「家や学校以外に居場所がない」と回答した人が16~18歳で約5割に達した。新たな出会いの多いこの季節にも、環境になじめず孤独感や疎外感を覚えるケースは少なくない。
何を「居場所」とするかは人それぞれであり、問題解決は簡単ではない。しかし、一人一人に向き合う努力は不可欠だ。「大事なのは『居場所』でなく『足場』」という言葉を耳にしたことがある。それぞれが「居場所」を見つけられる環境、きっかけづくりが重要なのではないか。
冒頭に挙げた曲では「居場所のない人」に向けて「ゆっくりと、誰かが手を貸してくれるのを待てばいい」と歌われている。私自身、かつて「居場所がない」と思い悩んだこともあるが、周囲のおかげで自分の「居場所」を見つけることができた。「今ここにいる」と誰もが実感できるように、私も誰かに「手」を差し伸べていきたい。(万浪耀)
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