高齢者の行動変える 旅行体験


VRを活用した取り組みが、高齢者の行動の変化と社会参画の機会を生み出している。企画や開発を行っているのは、東京大学先端科学技術研究センターの登嶋健太さんだ。登嶋さんは360度の映像を見て楽しむ「VR旅行体験」を、自力での外出が困難な高齢者へ提供。VR映像の制作を高齢者と一緒に行うこともある。今回、この取り組みについて登嶋さんに話を伺った。


登嶋さんは各地の高齢者向け介護施設でVR旅行体験会を開催してきた。施設利用者はVRを通じて、観光地への訪問や思い出の場所への再訪を体験する。多くの参加者は旅行を楽しむだけでなく、自らの行動を変える機会にもしているようだ。体験会を契機としてリハビリに励むようになる、スマートフォンを使い始めるなどの前向きな変化も見られた。


VR旅行が役立っているのは介護分野においてだけではない。登嶋さんは「楽しくVRをつくろう!」というワークショップも運営している。このイベントは、意欲的に社会と関わりを持とうとする「アクティブシニア」に、VR映像の作り手として社会へ参画する機会をもたらしている。ワークショップのメンバーはVR映像の撮影技術を学び、旅行先や観光地で撮影を行う。撮影したVR映像は旅行体験会で使用するほか、メンバーの中にはスタッフとして体験会の運営を手伝うようになった人もいる。


元々介護職員として活躍していた登嶋さん。これらの活動を行う中で、以前から興味があった「映像」を使って介護に関われることに意義を感じているという。「VRが高齢者に良い影響を与えているという証拠をさらなる研究を通して示していき、VRの可能性を世の中に広めたい」と意気込んだ。今後は、自身のノウハウを生かして、障害者や若年層へ向けた独自のサービスを、各分野の専門家と共に開発していく。高齢者の行動を変える、VRを活用した登嶋さんの挑戦はこれからも続く。(堤彬)

ゴーグル登場で大衆化

VRは「Virtual Reality」の略であり「仮想現実」「人工現実感」と訳される。現実には存在しないものを現実だと体感させる技術やシステムを指す。専用のVRゴーグルの登場により、大衆化も進んでいる。従来の映像技術にはない臨場感や没入感を有することから、ゲームをはじめとするエンターテインメントコンテンツにおける活用が目立つ。 混同されやすい技術に、AR(拡張現実)が挙げられる。コンピューターを