グローバル化が進む現代では、異文化間でのコミュニケーションの機会が急速に増えている。しかし実際に外国人と接したり、海外を訪れたりするとき、文化の壁は想像以上に高く立ちはだかる。ここでは、異文化間だからこそ起こる意思疎通の齟齬を解消するために必要なことについて記す。
▼異文化間コミュニケーションの発展
異文化間コミュニケーションは「文化背景を異にした人々の間で起こる相互作用」を指し、個人間で生じる。一つの国の中に多様な文化が存在し、人間の認識や思考、行動のパターンに影響を及ぼしている。
異なる文化圏同士のコミュニケーションは、古代から行われていた。世界の古代文明は海洋や河川での交易を通じて発展し、日本にも紀元前に大陸から稲作や金属が伝来した。晋で書かれた『三国志』には、日本の歴史や風俗についてつづられている。このように史実からも異文化間の交流の歴史がうかがえる。
現在は交通機関の発達により国境を越えた移動がしやすいほか、インターネットを通じて世界各地と瞬時につながることができる。さらに、国を越えた問題の解決や企業の海外進出といったことも、異文化間コミュニケーションを活発にした。しかし同時に、文化の違いが原因となり意思疎通に問題が起こっている。
▼コミュニケーションの意味解釈の違い
人々が状況に応じて発する言葉も、文化の影響を受けている。例えば、日本人は相手に何かをしてもらうと、後日「先日はどうも」とお礼をすることがある。そうしたやり取りが行われるのは、日本には人との関わりにおいて過去を重視するという文化背景があるからだ。相手との関係づくりに使われる言葉には、その地域の文化背景が強く反映されているといえる。
また、コミュニケーションの大部分は非言語によるものだ。動作や表情に加え、身体的接触、服装をはじめとする見た目、相手との距離感や会話中の沈黙の捉え方など、さまざまな要素がある。人は相手から受け取った言葉や非言語の情報を、自分の文化に基づいて解釈している。そのため、しぐさや行動への印象は文化によって違う。日本人女性に見られる口に手を当てて笑うしぐさは、日本では慎み深いものとされている。しかし、自己表現を重んずる社会では幼稚な行為や人を馬鹿にする行為として、不快な印象を持たれることもある。
▼誤解を防ぐには
異文化間コミュニケーションの重要性が今日より強調されたことはない。人は自文化に基づく価値観を判断基準とする傾向にあるため、異文化間ではしばしば認識の差が生まれる。相手の文化や価値観を知って誤解を減らし、互いに尊重した上で関係を築くことが大切だ。(梶原万穂)
《参考文献》
鍋倉健悦『異文化間コミュニケーション入門』(丸善ライブラリー)
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