VR開発ブームの契機には、フェイスブック社がオキュラスVR社を20億ドルで買収したことが挙げられる。オキュラスVR社は創業から間もないベンチャー企業で、VR映像を映すヘッドマウントディスプレイの開発中であり、ほとんど利益を上げていなかった。その中で20億ドルで買収に踏み切ったことから、フェイスブック社のVRに対する期待の大きさがうかがえる。
VRは映画産業からも強い関心を得ている。身近な例が、360度パノラマ映像だ。2015年、ウォルトディズニーカンパニーは、傘下の視覚効果スタジオILM内にVRやARコンテンツの専業部門を新設した。同部門は、グーグルとタッグを組み、VR映像を用いた「スターウォーズ フォースの覚醒」のショートコンテンツを配信。ヘッドマウントディスプレイを通し、同映画の舞台の一つである惑星ジャクーを見渡しながら走行できる映像だ。360度パノラマ映像を用いることで、作品の中に入り込んだような臨場感を味わうことができる。
現在、VR技術はショートコンテンツや短編映画などでしか使われていない。しかし、この技術が長編映画に使われれば、その映画に圧倒的な没入感を生み出す。既存の3Dや4DXは作品の場面とリンクして人間の五感を刺激している。VRの没入感と刺激は見る人を魅了し、今後の映像業界や映画業界を盛り上げるだろう。(永松由衣)
《参考文献》
VRビジネスの衝撃「仮想世界」が巨大マネーを生む(新清士、NHK出版、2016年)
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