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政治に参加を 個々の意見発信が出発点

若者は政治に関心がないという指摘を耳にすることは多い。しかし、関心の有無にかかわらず、政治は私たちの生活に影響を与える。今回は若者の政治離れが生じる要因と大学生にできることについて、アジア太平洋研究センター所長で法学部の高安健将教授に話を伺った。


若者は自らに公的サポートを受ける機会が少ないため、政治への関心を、他の世代の人々よりも持ちにくい。例えば、日本の学生は学費をはじめとする費用を家計で負担することが一般的だ。一方、ヨーロッパ諸国では教育にかかる費用が公的サービスによって支えられており、若い世代は当事者として政治に関心を持ちやすい。現在の日本には、若者の政治への参加が少ないことで若者に向けた政策が行われなくても済み、結果としてますます若者が政治に関心を抱かなくなるという悪循環が存在している。


政治に対する関心や当事者意識を持つには、自身が受けてきたサポートを誰が負担してきたのかを知ることが有効である。私たちは幼い頃、子ども医療費助成制度や学童保育などの政策による便益を受けた。他方、学費や住宅に対する支援を受けられる対象者は限られ、利用の際にも条件を伴う場合が多い。こうした事実を知ることで、若者も公的サポートを受けたり排除されたりする立場だと意識しやすくなる。


また、政治に参加する際の具体的な方法が分からない場合もあるだろう。注目されやすいのは選挙だが、そのほかにも方法は多くある。簡単にできるものは、周りの人と政治を話題にしたり、SNSで発信したりすることだ。世論調査に答えるのも参加だ。政治家と直接意見を交換できるタウンミーティングへの参加や、暴力的な行為を伴わないデモを通して自分たちの考えを伝えることも、政治参加に含まれる。


「若者」と一口に言っても、政治に対する意見や姿勢は個人によって異なる。高安教授は「若者一人一人が考えを発信し、政治家がそれを受け止めるという関係の構築が望ましい」と語る。若者が政治に参加することが、自身の未来を切り開くことにつながる。周囲との意見交換などを通じて他者の考えを知り、自分なりの考えを深め、発信していくことが大切だ。(梶原万穂)


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