睡眠時、当たり前のように見ている「夢」だが、脳の中では一体何が起こっているのか。今回は、脳科学の観点から夢について解き明かしていく。
そもそも睡眠には記憶整理の役割がある。覚醒中に取り込んだ情報の意味と重要性を判断するには、覚醒時間に対して半分の睡眠時間が必要だという。近年では、この記憶整理の過程に夢が関わっているのではと目されている。
さらに夢を見ているときの脳の活動についても徐々に明らかになってきた。人は睡眠時間の3分の2以上もの間、夢を見ている。だが覚えている夢の大半はレム睡眠時に見たものだ。睡眠中の人を起こして夢の内容を聞く実験では、レム睡眠中だった被験者の約80%が詳細に報告できたが、ノンレム睡眠中の被験者ではわずか7%にとどまった。この差はレム睡眠中の方が脳活動が活発であることや、セロトニンの濃度が低いために夢を重要だと感じる状態であることなどが原因と考えられている。
また、レム睡眠中の脳は関連の薄い連想を優先して行う。その時の夢は、当日や数日前の新しい記憶がそれらと関連の薄いより前の記憶と結合することで紡がれていく。そのためレム睡眠時の夢は奇妙な内容であることが多い。
このような夢の映像は目を閉じていても映し出される。それは覚醒時に人の顔を見たり想像したりする時と同じ活動を、脳が無意識に行っているからだ。同様に夢の中での思考や情動も、覚醒時の脳の活動が再生されることで起こると考えられている。
夢を見るメカニズムは日々解明されてきている。これらを知った上で初夢等の内容を振り返るのも面白いかもしれない。 (小川紀寧)
《参考文献》夢を見るとき脳は 睡眠と夢の謎に迫る科学(アントニオ・ザドラ、ロバート・スティックゴールド著、藤井留美訳、紀伊國屋書店、2021年)
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