コロナ禍による史上初の延期決定を含め、数々の荒波にもまれてきた東京五輪・パラリンピック。「United by Emotion」が同大会のモットーとして掲げられ、現状に適した形での安全な開催が望まれている。来る東京2020大会に向けて、五輪・パラリンピックの歴史を振り返る。
原初にあたる祭典競技は、紀元前776年にオリンピアで幕を開ける。当時は開催の度に休戦し、ポリス間のしがらみなしにギリシャ人が集う貴重な機会となっていた。しかし、競技に参加できるのはギリシャの自由市民かつ男性だけだった。
後に古代の聖火は途絶えるが、ルネサンスの広がりとともにギリシャの思想や生活への関心が高まった17世紀初頭から、五輪復興に向けた試みが行われ始める。フランス貴族であるピエール・ド・クーベルタンの手腕が功を奏し、1896年に近代初となる第1回アテネ大会が開催。彼は「五輪の大会は国際的な友好や親善につながる。勝利することではなく、参加し協力することに価値がある」といった考えの下に五輪の復興を成し遂げた。古代から勝者に冠を贈る役目を担っていた女性たちも、1900年からは競技選手として活躍し始める。
1960年の第17回ローマ大会より始まったパラリンピック大会以降、障害のある人々の活躍の場が広がりを見せていく。1989年に国際パラリンピック委員会が設立され、選手個々人の多様な障害にも対応するようになっていった。
さまざまな隔たりを越え世界全体が感動を共有してきたという軌跡こそが、五輪・パラリンピックの歴史であり価値といえる。多様な人々が「United」していくことに今後も期待が高まるばかりだ。五輪・パラリンピックは時代とともにかたちを変えながらもその歴史を刻み続けていく。(大村皐月)
《参考文献》
オリンピックのすべて 古代の理想から現代の諸問題まで(ジム・パリ―、ヴァシル・ギルギノフ著、舛本直文訳・著、大修館書店、2008年)
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