文京区本駒込に位置する東洋学専門の研究図書館、東洋文庫を取材してから半年が過ぎた。昨年11月号で取り上げたように、本学と強いつながりを持つ施設だ。本学学生であれば、貴重な展示品がそろうミュージアムに無料で入館することができる。
他の施設同様、新型コロナウイルスのあおりを受けた東洋文庫は、この事態を機に大きな変化を迎えている。
▼休館による影響
感染症拡大防止のため、東洋文庫は3月3日から休館となった。この期間に予定されていた企画は軒並み中止。特にミュージアムで催されていた「大清帝国展」は、清朝歴代皇帝ゆかりの書物や銅版画などが一堂に会する機会だっただけに、利用者への衝撃が大きかった。また、影響は研究活動にも及ぶ。多くの研究員が所属する東洋文庫では最先端の東洋学研究が行われてきたが、その活動が停滞。研究報告や書籍出版の遅れなど、長期的な課題が生じることが懸念される。
▼休館中の取り組み
東洋文庫は、このような状況下でもできることを模索し続けてきた。例えば、ニコニコ生放送が展開する「ニコニコ美術館」という企画では「大清帝国展」の展示資料が解説付きで紹介された。これは中止となった展覧会に対し、ニコニコ美術館が行った支援活動の一環だ。さらに、SNS上で展示資料を公開し、人々へ学びを提供し続けた。これらの反響は大きく、今まで東洋文庫を知らなかった人たちが施設を知るきっかけにもなった。
▼東洋文庫のこれから
緊急事態宣言の解除を受けて、6月24日にはミュージアムが再開された。来館者数の制限や、タッチパネルを用いた接触型展示の中止、来館者への検温や消毒など対策を徹底している。現在は、5月27日から延期となっていた「大宇宙展」が開催中だ。
一方、資料の閲覧室の再開はいまだに難しい状況にある。狭く「密」が発生しやすい上に、古い資料にはアルコール消毒を行えないからだ。そのため、ウイルスが死滅するまでの期間は返却された本を保管しておく、カウンターにビニールの幕を設置するなどの対策を取り、今月末の再開を目指す。
ウィズコロナを念頭に置いた体制に加えて、将来的にはインターネット上での文献公開にも力を入れていくという。これら一連の試みは、長期間学びの機会が失われる状況を二度と生み出さないという、学術機関としての決意の表れでもある。コロナ禍を経た東洋文庫がどのように変わっていくのか、その動向からますます目が離せない。(小泉唯斗)
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